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アクセシビリティガイドラインWCAG2.2について(第3 / 3回)【実践編】

前回の続きです。

第1回 概要編

各役割におけるアクセシビリティ

WCAG 2.2の基準を考慮しながらウェブサイトを制作する際に、デザイン以前、デザイン時、コーディング時の各段階で注意すべき点を以下に分けて説明します。

デザイン以前にすべきこと

  • アクセシビリティの方針の策定
    • チーム全体でアクセシビリティの重要性を理解し、共通の目標を設定する。
    • WCAG 2.2の基準をプロジェクトの必須要件として明示する。
    • アクセシビリティを優先するための内部ガイドラインやチェックリストを作成する。
  • ユーザーリサーチ
    • 障害を持つユーザーも含めた多様なユーザー層のニーズをリサーチする。
    • ユーザーインタビューやアンケートを通じて、実際の使用状況や課題を理解する。
    • ユーザビリティテストに障害者を含める計画を立てる。
  • ペルソナの作成
    • さまざまな障害を持つユーザーを含めたペルソナを作成し、ユーザーのニーズや行動を具体化する。
    • ペルソナを基にしたユーザーストーリーを作成し、実際の利用シナリオをシミュレーションする。
  • 競合分析
    • アクセシビリティに優れた他のウェブサイトやアプリケーションを分析し、ベストプラクティスを学ぶ。
    • 競合他社のアクセシビリティ対応状況を調査し、改善点や優れた点を把握する。
  • ツールと技術の選定
    • アクセシビリティ対応のツールや技術を選定する。
    • アクセシビリティチェックツール(例:WAVE、Axe、Lighthouse)の導入を検討する。
    • アクセシビリティに関するベストプラクティスを実践するためのフレームワークやライブラリを選定する。
  • 教育とトレーニング
    • チームメンバー全員がアクセシビリティについて十分な知識を持つように教育やトレーニングを実施する。
    • アクセシビリティに関する最新情報や技術を定期的に共有する仕組みを作る。
  • プロジェクト計画への組み込み
    • アクセシビリティ対応のタスクをプロジェクト計画に組み込み、各フェーズでのチェックポイントを設定する。
    • デザイン、開発、テストの各段階でアクセシビリティを確認するプロセスを明確にする。

まとめ

  • アクセシビリティの方針の策定: プロジェクト全体で共通の目標とガイドラインを設定。
  • ユーザーリサーチ: 多様なユーザーのニーズを理解する。
  • ペルソナの作成: 障害を持つユーザーを含めた具体的なペルソナとユーザーストーリーを作成。
  • 競合分析: 他のアクセシビリティ対応のベストプラクティスを学ぶ。
  • ツールと技術の選定: アクセシビリティ対応のための適切なツールと技術を選定。
  • 教育とトレーニング: チーム全体でアクセシビリティの知識を共有。
  • プロジェクト計画への組み込み: 各フェーズでのアクセシビリティチェックをプロジェクト計画に組み込む。

これらのステップをしっかりと踏むことで、デザインおよび開発の段階において、WCAG 2.2に準拠したアクセシビリティ対応がスムーズに進行します。

デザイン時にすべきこと

  • カラーとコントラスト
    • コントラスト比: テキストと背景のコントラスト比を少なくとも4.5:1(レベルAA基準)、可能であれば7:1(レベルAAA基準)を確保する。
    • 色の意味依存回避: 情報を伝えるために色のみに依存しない。例えば、エラーメッセージを赤色で表示する場合、アイコンやテキストでエラーであることを明示する。
  • レイアウト
    • 一貫性: ナビゲーションメニューやボタンの配置など、ウェブサイト全体で一貫性を保つ。
    • レスポンシブデザイン: デスクトップ、タブレット、モバイルなど、異なるデバイスサイズに対応するデザインを採用する。
    • 柔軟なレイアウト: 拡大・縮小してもコンテンツが崩れないようにする。
  • タイポグラフィ
    • フォントサイズ: 最低でも16pxのフォントサイズを推奨。ユーザーがテキストを拡大しても読みやすいようにする。
    • 行間と文字間: 十分な行間と文字間を設定し、テキストが詰まりすぎないようにする。
  • メディアの利用
    • 代替テキスト: 画像には必ず代替テキストを提供する。装飾的な画像には空のalt属性(alt="")を設定する。
    • 字幕とトランスクリプト: ビデオには字幕を、音声コンテンツにはテキストのトランスクリプトを提供する。
    • メディアコントロール: ユーザーがビデオや音声の再生・停止を容易に行えるコントロールを提供する。
  • インタラクティブ要素
    • ボタンとリンク: ボタンやリンクのサイズを十分に大きくし、クリックやタップがしやすいようにする。
    • フォーカスの可視化: フォーカスされた要素が視覚的に明確に分かるようにデザインする(例:フォーカス時にアウトラインを表示する)。
  • フォームのデザイン
    • ラベルの明示: フォームフィールドには必ずラベルを関連付ける。プレースホルダーだけに依存しない。
    • エラーメッセージの表示: エラーが発生した場合、視覚的に明示し、ユーザーにどこで何が問題だったのかを具体的に伝える。
    • タブ順序: フォームフィールドのタブ順序を論理的に配置し、ユーザーが直感的にナビゲートできるようにする。
  • ナビゲーション
    • スキップリンク: コンテンツの主要部分に直接ジャンプできるスキップリンクを提供する。
    • 明確な見出し: ページ内の見出しやセクションを明確にし、ユーザーがコンテンツを容易にスキャンできるようにする。
  • ターゲットサイズの最小化
    • クリック可能な要素(ボタンやリンクなど)のターゲットサイズを少なくとも24×24ピクセルに設定する(新規基準: 2.5.8)。
  • フォーカス可視性の強化
    • フォーカスされた要素が視覚的に分かりやすく、移動してもフォーカスインジケーターが十分に目立つように設計する(新規基準: 2.4.11)。

まとめ

  • カラーとコントラスト: 高いコントラスト比を確保し、色のみに依存しない情報伝達。
  • レイアウト: 一貫性のあるレスポンシブデザインを採用。
  • タイポグラフィ: 読みやすいフォントサイズと行間、文字間の設定。
  • メディアの利用: 画像の代替テキスト、ビデオの字幕、音声コンテンツのトランスクリプト、ユーザーが操作しやすいメディアコントロールの提供。
  • インタラクティブ要素: 十分なサイズのボタンとリンク、フォーカスの可視化。
  • フォームのデザイン: 明確なラベル、エラーメッセージの表示、論理的なタブ順序。
  • ナビゲーション: スキップリンクの提供、明確な見出しの設定。

これらの点に注意することで、デザイン時にWCAG 2.2に準拠したアクセシビリティ対応が実現しやすくなります。

コーディング時にすべきこと

  • HTMLの構造
    • セマンティックHTML: 見出しには<h1>から<h6>のタグを使用し、適切な階層構造を保つ。段落には<p>タグ、リストには<ul>, <ol>, <li>タグを使用する。
    • 正しいタグの使用: HTMLタグを正しく閉じ、ネストを適切に行う。エラーフリーのHTMLを目指す。

    例:

    Bad Example:
    <div>見出し</div> <div>段落</div>
    Good Example: 
    <h1>見出し</h1> <p>段落</p>
  • ARIA (Accessible Rich Internet Applications)
    • ARIA属性の適用: 必要に応じてARIA属性を使用し、名前、役割、状態を明示する。標準のHTML要素で対応可能な場合は、ARIAの使用を避ける。

    例:

    Bad Example: 
    <div onclick="submitForm()">送信</div>
    Good Example:
    <button onclick="submitForm()" aria-label="Submit button">送信</button> 
  • キーボード操作の確保
    • キーボード操作可能なインターフェース: すべての機能がキーボードで操作可能であることを確認する。tabindex属性を適切に設定し、フォーカスの順序を自然に保つ。

    例:

    Bad Example:
    <button style="outline: none;">クリック</button>
    Good Example:
    <button>クリック</button>
  • フォーカスの可視化
    • フォーカススタイルの追加: フォーカス状態を視覚的に明確にするためのスタイルを追加する。:focus疑似クラスを使用して、キーボードフォーカスの状態を強調する。

    例:

    <style> button:focus { outline: 2px solid blue; } </style> 
    <button>クリック</button>
  • メディアのアクセシビリティ
    • 画像の代替テキスト: 画像には必ず代替テキストを提供する。装飾的な画像には空のalt属性(alt="")を設定する。

    例:

    Bad Example:
    <img src="image.jpg">
    Good Example:
    <img src="image.jpg" alt="説明的なテキスト">
    • 字幕とトランスクリプト: ビデオには字幕を、音声コンテンツにはテキストのトランスクリプトを提供する。
    <!-- ビデオの例 --> 
    <video controls> <source src="video.mp4" type="video/mp4"> <track kind="subtitles" src="subtitles.vtt" srclang="ja" label="日本語字幕"> </video>

    例:

  • JavaScriptとインタラクティブ要素
    • 動的コンテンツのアクセシビリティ: JavaScriptで動的に生成されるコンテンツやインタラクションに対しても、アクセシビリティを確保する。ARIA属性や適切なイベントハンドラを使用する。

    例:

    Bad Example:
    <div onclick="toggleMenu()">Menu</div>
    Good Example:
    <button onclick="toggleMenu()" aria-expanded="false">Menu</button>
  • フォームのアクセシビリティ
    • ラベルの関連付け: フォームフィールドには必ずラベルを関連付ける。プレースホルダーだけに依存しない。

    例:

    Bad Example:
    <input type="text" placeholder="名前">
    Good Example:
    <label for="name">名前</label> <input type="text" id="name" name="name">
    • エラーメッセージの表示: エラーが発生した場合、視覚的に明示し、ユーザーにどこで何が問題だったのかを具体的に伝える。

    例:

    <form>
      <label for="email">Email</label>
      <input type="email" id="email" name="email">
      <span class="error" id="email-error" aria-live="polite">有効なメールアドレスを入力してください</span>
    </form>
    
  • ドラッグジェスチャーの代替: ドラッグアンドドロップの操作に対して、代わりにクリックやキーボード操作で同じ操作を可能にする方法を提供する(新規基準: 2.5.7)。
  • 認証の代替手段: 認証時に、ユーザーがパスワードを覚える必要がない代替手段(例: 生体認証やワンタイムパスワード)を提供する(新規基準: 3.3.7)。
  • 再入力の最小化: 認証フォームで、すでに入力した情報を再度入力する必要がないようにする(新規基準: 3.3.8)。

まとめ

  • HTMLの構造: セマンティックHTMLを使用し、正しいタグの使用。
  • ARIA: 必要に応じてARIA属性を使用し、名前、役割、状態を明示。
  • キーボード操作の確保: すべての機能がキーボードで操作可能であることを確認。
  • フォーカスの可視化: フォーカス状態を視覚的に明確にする。
  • メディアのアクセシビリティ: 画像の代替テキスト、ビデオの字幕、音声コンテンツのトランスクリプトの提供。
  • JavaScriptとインタラクティブ要素: 動的コンテンツのアクセシビリティを確保。
  • フォームのアクセシビリティ: ラベルの関連付け、エラーメッセージの表示。

これらの点に注意することで、コーディング時にWCAG 2.2に準拠したアクセシビリティ対応が実現しやすくなります。

第1回 概要編

第2回 成功基準の具体例・役割編

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